人間の眼に秘密
なぜ振り子をみると、眠くなるか?
じつは振り子ではなく、人間の眼に秘密があります
人間の眼は、上下左右に筋肉が動かしています
じつは、人間の眼は、上下左右に平等ではありません
人間の眼球を動かしている筋肉は上下に動かすほうは疲れにくいのですが、左右に動かすほうは筋肉量が少ないのですぐに疲れてしまうのです
ですから、振り子のように左右に動くものを集中して見つめさせられると、眼球を動かしている筋肉が疲れてしまうのです
つまりこれは、「両手を固く組んで人指し指だけを、力一杯開けた状態」と同じ現象をつくり出しているに過ぎないのです
指の筋肉ではなく、眼球を動かす筋肉を使っているだけなのです
このように振り子の左右に動く運動を集中して見つめさせると、眼球付近に疲労を感じてきます
その時、催眠術師は被験者に対して、「目が重くなってくる!」と自信たっぷりに言います
この時、よーく考えてください!
「目が重くなってくる!」とは、なんでしょうか?
「目が疲れたから疲労している感じがしますね」とは言わずに、「目が重くなってくる!」と言うのです
催眠術をかけられている人の意識は、思わず「目が重くなってくる!」とはどういう状態だろうか?と考えてしまうのです
そうして眼の付近の筋肉を感じたときに、疲労感を覚えます
この時、小さく「あっ目が重くなってくるって、こういう感じ?!」と思ってしまうのです
思ってしまうと、催眠術師の罠にはまっています
催眠術師の、詐欺的な術にかかってしまう瞬間です
自分で勝手に疲労した筋肉の感じを感じているときに、催眠術師が次のように言います!
「目が重くて、もう瞼を明けていられない!」
この時、詐欺的な術にかかってしまっていて、眼の付近の筋肉に疲労感を覚えていたら、
思わず目を閉じてしまいます
そして、次に言われるのが、こうです
「眠い、だんだん眠くなってきました!」
ここで被験者は、眠ってしまいます
じつは眠っているのではなく、催眠術にかかってしまったのです
もし本当に眠っているのであれば、催眠術師の言う暗示が聞こえないはずなのに、聞こえ
ていますから、眠っているわけではありません
催眠術はこういう手順
つまり、催眠術はこういう手順で行われます
1・実際には、違う原理で起こっている現象を、あえて言葉で説明して、違う方向に誘導してます
筋肉が疲労していることを、重い!と表現します
2・そして疲労している感じを隠して、重いから瞼を開けていることができない、と感じさせるのです
3・そして眼を閉じてしまうと、「眠い!」と言います
でも、考えてください
眼を閉じることと、眠いのとは、本当は違うことです!
それが眼の付近に疲労を感じていて、催眠術師の言うとおりここまで眼を閉じるまでやってきたので、これからも従おうと思ってしまうとのです
「思ってしまう」?
いったい、ここで「思ってしまう」のは誰でしょう?
それは被験者の意識です
被験者の意識が、肉体の管理を暗示のとおりしてしまいます
おおげさな表現で言うと、この時意識が「肉体の管理」を放棄してしまうのです
この感覚が、映画館のスクリーンで自分のしていることを、眺めているような感覚につな
がっていくのです
ここで働くのが、「意識の一貫性を保とうとする働き」です
さて、話を戻します
さきほどの5円玉の振り子を使って、眠りに誘導された若い女性の話です
まだ催眠術にかけられて、入り口のところなので、あまり深い催眠状態ではありません
こんな状態でいきなり、「さあ服を脱ぎましょう」と言っても、それは無理な話です
つまり無意識が「この催眠術師は、自分になにか変なことをするんじゃないか?」と警戒をしている段階なのです
そこで、次第に催眠状態を深めていく暗示をかけます
そのコツは、「この催眠術師は、自分になにか変なことをするんじゃないか?」という警戒を、良く知って行うことです
そこで、「あなたは今、綺麗な湖の見える丘の上にいます」という暗示を言います
こういう暗示であるなら、危険性は無いし、むしろ気持ち良くなると思わせるのです
無意識の警戒感も、こういう暗示なら受け入れる可能性が高いはずです
(受け入れる可能性が高いと言いましたが、もしこの女性が子供の時に湖で溺れかけたとか、そんな記憶を持っていたとすると、それは良くない思い出なので、拒否することがあるのです)
さわやかな風が吹いています
そうして次に、「さわやかな風が吹いています、辺りには花が咲いていて、とてもいい気持ちです」という暗示をかけます
これも、受け入れます
このような快適にさせる暗示を、次々と受け入れさせることにより、相手を次第に深い催眠状態に導いていきます
たとえば、この女性が湖の畔に、西洋風のお城を見るとします
そこで自分は、隣の国のプリンセスであって、今夜そのお城で舞踏会があるのだということを思い出させます
そして湖に映った自分の姿を見せると、それは金髪で青い眼をしている22歳の白人女性であると、暗示をかけます
おそらく、その暗示は快適であるために、受け入れられると思われます
そうしますと、それは現代の日本人女性の容姿とはかけ離れたものであり、服装になります
当然、舞台も中世のヨーロッパになります
ここで思い出してください
催眠術にかかっている人間の感じている感覚を!
映画館のスクリーンで、自分のしていることを眺めているような感覚です
その映画館のスクリーンに映っている自分が、金髪で青い眼をしている22歳の白人女性なら、自分とは関係ない当事者であるという意識が芽生えても不思議はありません
さて、そのお城にはブラッド・ピットと本木雅弘を、足して2で割ったような素敵な王子が、あなたを待っているとしましょう
その人はプリンセスであるあなたの、結婚相手なのです!
そういう快適な幻想を、暗示を使って、物語の魔力で催眠の世界に完全に引っ張りこむのです
「危険なスパイス」
でもその前に、スパイスを効かせましょう
「危険なスパイス」です
初めてのデートでは、ホラー映画を見せるという作戦を知っていますか?
これは、ホラー映画のような恐ろしい場面を見ると、血圧が上がったり心臓の鼓動が速くなるという身体現象が現れる効果を利用するものです
血圧が上がったり心臓の鼓動が速くなるのは「恐怖」のためですが、恋をしたときにも同じ身体現象が現れます
ホラー映画の恐ろしい場面を見て、血圧が上がったり心臓の鼓動が速くなっている状態で、横に異性がいると、心が勘違いします
つまり血圧が上がったり心臓の鼓動が速くなっている自分の状態は、隣にいる異性に恋をしているからに、違いないと思うのです
そういう理論です
そこで同じ手を、催眠術でも使います
あなたが湖からお城に戻ろうと、森の中を一人で歩いていくと、狭くて深い谷に吊り橋が懸かっていて、そこを通らないとお城に帰れません
しかたなしにその揺れる吊り橋を、一人で渡っていきます
もう少し!というところまで、吊り橋を渡ったところで、突然、橋が切れて谷底へ真っ逆さまに落ちていきます
「助けてー!!」
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